PLMとは?製造業における役割・基本機能・メリットをわかりやすく解説
近年、日本の製造業では、グローバル化やデジタル化の進展に伴い、製品開発を取り巻く環境が大きく変化しています。製品の高機能化や短納期化に加え、海外市場への展開や環境規制への対応など、企業が抱える課題は複雑化しています。
一方で、「設計情報が後工程に正しく伝わらない」「部門間で情報を共有できず、手戻りが発生する」といった課題も少なくありません。製品開発に関する情報が部門や工程ごとに分断されると、業務効率の低下だけでなく、開発期間の長期化やコスト増加、品質低下のリスクにもつながります。
こうした課題の解決に向けて注目されているのが、PLM(製品ライフサイクル管理)です。
本記事では、PLMとは何か、PLMシステムの基本機能、導入によって得られる3つのメリット、導入時の注意点まで、わかりやすく解説します。
PLMとは?
PLM(製品ライフサイクル管理)の概要
PLM(Product Lifecycle Management:製品ライフサイクル管理)とは、製品の企画・設計から製造、保守、廃棄まで、製品に関する情報をライフサイクル全体で一元管理・活用するための考え方や仕組みです。

製品ライフサイクル全体に関わる情報を統合することで、開発効率の向上や企業の競争力強化につながります。PLMが対象とする主な領域は以下の通りです。
- 企画・構想
- 設計・開発
- 生産・製造
- 販売・出荷
- 保守・アフターサービス
- 廃棄・リサイクル
PLMの大きな特徴は、各段階で発生する設計図面、部品情報(BOM)、変更履歴、品質データなどを部門やシステムを横断して共有・活用できる点にあります。
近年、製造業を中心にPLMの導入が急速に進んでいますが、その背景には業界特有の課題が存在します。
PLMシステムの具体例として、製造業のDXを支援する「Aras Innovator」の機能や特徴について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
>>> 関連記事:【徹底解説】製造業DXを加速させるAras Innovatorとは?機能・特徴・選ぶ理由を紹介
なぜ製造業でPLMが重要なのか?
製造業では、市場ニーズの多様化や技術の高度化により、製品開発を取り巻く環境が変化しています。ここでは、PLMが重要となる4つの背景を紹介します。
① 製品の多品種化・短納期化
顧客ニーズの多様化に伴い、製品バリエーションの増加と開発納期の短縮が強く求められています。市場競争が激化する中、限られた時間で多様な製品を効率的に開発・生産する体制の構築が、製造業における重要な課題となっています。
② 設計変更の増加と複雑化
製品の高機能化に伴い、設計変更の頻度や影響範囲は拡大しています。ある部品の変更が他工程へ及ぼす影響も大きいため、変更履歴を正確に管理し、関係部門とリアルタイムで共有する仕組みが不可欠です。
③ グローバル化による部門・拠点の分散
海外展開や生産拠点の分散により、設計・製造・販売が地理的に離れて業務を行うケースが増加しています。拠点間での情報伝達漏れや認識の齟齬を防ぎ、リアルタイムで情報共有できる環境の整備が求められています。
④ 熟練技術者の退職によるノウハウ継承の課題
少子高齢化に伴う熟練技術者の退職により、長年培われた設計ノウハウや品質管理の知見が失われるリスクが高まっています。個人に属人化しているノウハウを組織の知識として蓄積・共有し、次世代へ継承することが製造業の重要な課題です。
PLMシステムの基本機能
PLMシステムには、製品ライフサイクルに関する情報を一元管理し、部門間の情報共有を支えるさまざまな機能があります。ここでは、代表的な5つの基本機能を紹介します。

マスタ管理
図面や品目、ドキュメントなどの製品マスタデータを一元管理する機能です。部門ごとに分散しがちな情報を集約することで、データの重複や不整合を防ぎ、最新かつ正確な情報を全社で共有できる環境を整備します。
BOM管理
設計BOMをはじめ、製造BOMやサービスBOMなどの部品表データを一元管理する機能です。工程ごとに異なるBOMを統合的に扱うことで部門間の認識のズレを防ぎ、後工程への正確な情報伝達を支援します。
設計変更管理
設計変更の理由や内容を履歴として正確に記録・管理する機能です。「誰が・いつ・何を・なぜ変更したのか」を明確にして関係部門へ迅速に伝達できるため、トラブル発生時の原因究明や再発防止にも役立ちます。
ワークフロー管理
設計レビューや製品リリースなどの承認プロセスをシステム上で可視化・管理する機能です。承認の遅延や漏れを防ぎ、業務の進捗状況をリアルタイムで把握できるようにします。
プロジェクト管理
製品開発プロジェクト全体の進捗状況を可視化して管理する機能です。タスクの進み具合やスケジュールの遅れを早期に検知できるため、開発遅延のリスクを抑え計画的な運営を支援します。
PLM導入の3つのメリット
PLMを導入することで、製品開発や製造業務の効率化など、さまざまな効果が期待できます。ここでは、PLM導入による代表的な3つのメリットを紹介します。
製造業におけるPLM導入の メリット
コストの削減
図面や仕様書を一元管理することで、データ検索や部門間の確認にかかる工数を削減し、手戻りによる人件費や材料費のロスを抑えやすくなります。さらに、原価情報をBOMと連携させることで、設計段階から原価を把握しやすくなり、後工程でのコスト超過リスクを抑えるための判断を支援します。
製品品質の向上
製品構成やドキュメントを一元管理することで、現場から得られたフィードバックを次の製品開発へ反映しやすくなり、設計段階で品質を作り込むフロントローディングを支援します。さらに、不具合情報を統合的に管理することで、類似トラブルの再発防止や拠点間の品質ばらつきの抑制につながり、製品の信頼性向上が期待できます。
業務効率化・リードタイムの短縮
企画から保守までの情報を関連付けて一元管理することで、部門間の確認や情報伝達を効率化し、設計変更や手戻りの削減を通じて、製品開発のリードタイム短縮につなげられます。PLMの導入は、コスト・品質・納期という製造業の重要な要素の改善に寄与し、競争力強化を支える基盤となります。
ルビナソフトウエアの製造業におけるPLM導入事例も参考にしながら、具体的な活用方法を見てみましょう。
PLMシステムを導入する際の注意点
PLM導入の効果を高めるには、自社の課題や業務に合わせた導入計画が重要です。ここでは、導入時に押さえておきたい4つの注意点を紹介します。

導入目的を明確にする
PLM導入時は自社の課題を整理し、導入目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧なままでは現場に定着せず、期待した効果を得にくくなります。そのため、事前のヒアリングで業務上のボトルネックを洗い出したうえで、PLMシステムの選定ポイントを明確にする必要があります。
段階的に導入する
全社・全工程への一括導入は、業務やデータの整備状況によっては現場の混乱を招く可能性があります。そのため、特定部署や一部製品からスモールスタートし、小規模運用で課題や改善点を検証しながら適用範囲を拡大する方法も有効です。これにより、自社の業務に合わせたシステム構築を段階的に進めやすくなります。
全社で意識を統一して取り組む
従来の運用からの脱却には、システム構築以上に社員の意識改革が成功のカギとなります。研修やマニュアル整備でPLMの目的やメリットを周知し、現場の不安を解消しながら推進することで、新しい運用の定着や形骸化の防止につながります。
長期的な視点で取り組む
PLMの効果発現には一定期間を要するため、グローバル化や環境規制といった市場変化を見据えた長期視点での継続的な運用・改善が不可欠です。社内にIT人材やリソースが不足する場合は外部コンサルタントや運用サポートの活用も有効な選択肢となるため、内製と外部委託の最適なバランスを見極めて進めることが重要です。
PLMとMESはどちらも製造業のDXを支えるシステムですが、管理する情報や役割には違いがあります。自社に適したシステムを検討するには、両者の違いを理解しておくことが重要です。詳しくは以下の記事で解説しています。
まとめ
製造業においてPLMは、部門や拠点をまたいだ情報共有・連携を実現し、製品開発や製造業務の効率化を支援する基盤として活用されています。業務効率化や品質向上、コスト削減に加え、製造業のDX推進にもつながります。
PLMシステムを導入する際は、自社の課題や導入目的を明確にし、必要な機能や導入範囲を検討することが重要です。また、導入後の運用や将来的な拡張性も考慮し、自社に適したPLMシステムを選定することが求められます。
ルビナソフトウエアは、Aras Innovatorを活用したBOM・文書管理を含むPLM関連システムの開発、カスタマイズ、保守・運用を支援しています。日本向けソフトウェア開発で培った知見を活かし、お客様の業務や既存環境に応じた導入・開発・運用を支援します。
Aras InnovatorをはじめとするPLMソリューションの開発・カスタマイズや運用支援にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q1. PLMとは?
PLM(製品ライフサイクル管理)とは、製品の企画・設計から製造、販売、保守、廃棄まで、製品に関する情報と業務プロセスをライフサイクル全体で一元的に管理・活用する考え方です。これを実現するIT基盤がPLMシステムです。
Q2. 製造業でPLMが注目されている理由とは?
製品の多品種化・高機能化やグローバル化に伴い、設計変更の複雑化、拠点の分散、熟練者のノウハウ継承といった課題が深刻化しているためです。PLMで製品情報と関連プロセスを一元的に管理し、部門や拠点間で共有しやすくすることで、開発効率、品質維持、ノウハウ継承を支援できる点が注目されています。
Q3. PLMシステムの基本機能とは?
主な基本機能には、製品データを統合するマスタ管理、部品表を扱うBOM管理、変更履歴を追跡する設計変更管理、承認プロセスを可視化するワークフロー管理、進捗を管理するプロジェクト管理の5つがあります。これらの機能により、製品情報とプロセスを一元的に管理し、部門間の連携を支援します。
Q4. PLM導入のメリットとは?
主なメリットは、製品データの一元管理による確認工数や手戻りの削減、品質情報の活用による製品品質の向上、部門間連携の効率化によるリードタイム短縮です。これらは、コスト・品質・納期の改善に寄与し、製造業の競争力強化を支えます。
Q5. PLMシステムはどのように導入すればよいですか?
まずは業務上の課題を洗い出して導入目的を明確にし、必要な機能、データ整備、既存システムとの連携、運用体制を整理します。自社の状況に応じて特定部署や一部製品から段階的に導入し、検証結果を踏まえて適用範囲を拡大する方法が有効です。定着には時間を要するため、長期的に改善を続け、必要に応じて外部支援も活用します。