【2026年版】PLMとPDMの違いとは?連携方法・導入手順までわかりやすく解説
「PLMとPDMの違いがよくわからない」「自社にはどちらが適しているのか判断できない」と悩んでいませんか。製造業DXや製品開発のデジタル化が進む中、PLMとPDMは製品情報を効率的に管理するための重要なシステムです。
PDM(製品データ管理)は、CADデータや図面、部品表(BOM)など、主に設計・開発に関する情報を一元管理します。一方、PLM(製品ライフサイクル管理)は、企画から設計、製造、保守、廃棄まで、製品ライフサイクル全体を対象に情報や業務プロセスを管理します。
設計データの管理を重視する場合はPDM、部門を横断して製品ライフサイクル全体を管理する場合はPLMが適しています。また、PDMとPLMを連携し、それぞれの役割を活かす運用も可能です。
本記事では、PLMとPDMの違いを整理し、両システムの連携方法やERP・PIMとの関係、導入手順、選定時のポイントまでわかりやすく解説します。

PLMとPDMの基本概念
PLMとPDMはどちらも製品情報を扱うため混同されやすいシステムですが、管理範囲や目的は大きく異なります。まずそれぞれの基本的な役割を押さえておきましょう。
PDM(製品データ管理)は、設計部門で生まれるデータを正確に管理するシステムです。
CADモデルや図面などを一元管理し、リビジョンや承認状況を追跡することで、「どれが最新の図面かわからない」といった設計現場のトラブルを防ぎます。
一方、PLM(製品ライフサイクル管理)は、製品の構想から設計、製造、保守、廃止に至るまで、情報と業務プロセスの流れを管理する仕組みです。
製品データに加え、設計変更の承認や品質・コンプライアンス対応など、部門をまたぐ意思決定も対象となります。
PDMが「データの正確性」を守るのに対し、PLMは「情報がライフサイクル全体でどう流れるか」を統制するシステムといえます。
両者の主な違いを以下の表に整理しました。
| 項目 | PDM(製品データ管理) | PLM(製品ライフサイクル管理) |
| 主な目的 | 設計ファイル・リビジョンの正確な管理 | ライフサイクル全体のデータ・プロセスの統制 |
| 適用範囲 | 設計・エンジニアリング部門 | 企業活動全般(部門横断) |
| 主な管理データ | CADモデル、図面、設計BOM(EBOM)など | 要求事項、BOM、変更要求(ECR/ECO)、品質データなど |
| 主な利用者 | 設計エンジニア、CADユーザー | 設計、製造、品質、調達、サービス各部門 |
| 導入負荷 | 部門単位で比較的小規模に導入可能 | 全社規模の取り組みとして中長期で実施 |
| 適した企業 | 設計データの管理・共有を効率化したい企業 | 製品ライフサイクル全体を一貫して統制したい企業 |
このように、PDMは設計データのバージョン管理に特化している一方、PLMは設計から後工程までをつなぐ全社的な基盤です。
この違いを把握しておけば、自社に最適なシステムアプローチをスムーズに見極められるようになります。
PDM(製品データ管理)とは
PDMは、設計・開発業務で発生する情報を整理・管理し、必要なデータを適切な担当者が利用できる環境を整える仕組みです。設計変更や承認、データの検索・共有などを効率化し、設計業務における情報の正確性とトレーサビリティを確保します。
設計データが個人のPCや共有フォルダに分散していると、古いバージョンの参照やファイルの重複などが起こりやすくなります。PDMによってデータのバージョンや変更履歴、アクセス権限などを適切に管理することで、こうしたミスを抑えながら、設計・開発業務の効率化と部門内のスムーズな情報共有を実現できます。
PDMが管理するデータ
PDMは、設計ファイルとそれに付随する情報を体系的に管理するシステムです。主なデータの種類は次のとおりです。
- CADモデル、図面、アセンブリ
- 技術仕様書および関連ドキュメント
- 部品番号、作成者、リリースステータスなどのメタデータ
- ファイル間の関係および製品構造
- 設計バージョンと正式にリリースされたリビジョン
このように構造化して管理することで、設計チームは開発プロセス全体を通じて、信頼できる唯一の設計データ(シングルソース)を維持できます。
機能はベンダーによって異なりますが、多くのPDMソフトウェアに共通する基本機能は次のとおりです。
- チェックイン / チェックアウト
- バージョン管理・リビジョン管理
- アクセス権限管理
- 高度な検索機能
- ワークフロー管理
- 設計コラボレーションとデザインレビュー
主な利用者は次のとおりです。
- 設計エンジニア
- CADユーザー
- 設計マネージャー
- PDM管理者
これらの機能により、設計チームは製品データの正確性と管理体制を保ちながら、効率的に協働できるようになります。
PDMでは対応しにくい領域
PDMは、全社的な製品ライフサイクル管理ではなく、設計・エンジニアリング領域に特化したシステムです。
近年のPLMプラットフォームの多くはPDM機能を内包していますが、CADに特化した既存のPDMとPLMを連携させるアプローチをとる企業も少なくありません。実際のシステム構成は、ベンダーや導入するアーキテクチャによって異なります。
しかし、製品の複雑化に伴い、設計変更のプロセスには製造・品質・調達・コンプライアンスなど多くの部門が関わるようになります。こうした背景から、より広範なライフサイクル管理を実現するために、PDMの領域をPLMで拡張するケースが近年ますます増えています。
PLM(製品ライフサイクル管理)とは
PLMは、製品に関する情報だけでなく、それに紐づく業務プロセスやワークフローまで一貫して管理することで、製品開発・製造に関わる部門間の連携を支援します。設計変更や承認、品質管理などの情報を適切に共有し、部門ごとに分断されがちな業務をスムーズにつなげられる点が特徴です。
たとえば設計変更が発生した場合、関連する情報が製造や調達に正しく伝わらなければ、旧仕様に基づいて部品を手配するなどのミスにつながる可能性があります。PLMによって情報と業務プロセスを連携させることで、こうした情報伝達の漏れや手戻りを抑え、製品開発から製造、保守までの業務を効率化できます。
PLMの基本的な考え方や製造業における役割、主な機能、導入によるメリットについては、[PLMとは?製造業における役割・基本機能・メリットをわかりやすく解説]もあわせてご覧ください。
PLMで管理するプロセス
PLMは設計部門にとどまらず、製品ライフサイクル全体をつなぐワークフローを支援します。代表的なプロセスは次のとおりです。
- 要求事項管理:顧客や市場の要求を整理し、設計仕様へ落とし込む
- 製品構成・コンフィギュレーション管理:部品構成や製品バリエーションを正確に管理する
- 設計変更管理:ECR/ECOを通じて、変更の申請・評価・承認・展開を統制する
- 新製品導入(NPI):設計から量産立ち上げまでの移行を計画的に進める
- 品質・コンプライアンス管理:不具合への対応や、規制・環境基準への適合状況を管理する
- サプライヤーとのコラボレーション:取引先と必要な設計情報を安全に共有する
- サービスライフサイクル管理:出荷後の保守や部品交換に必要な情報を管理する
これらのプロセスが連動することで、当初の要求事項から製品の廃止に至るまで、製品情報がどう変化してきたかを一貫して追跡できます。こうした一貫した情報追跡が、PLMにおけるエンドツーエンドのトレーサビリティにつながります。
PLMの主な機能と利用部門
上記のプロセスを支えるため、一般的なPLMプラットフォームには次のような機能が備わっています。
- 製品データおよびライフサイクルのガバナンス
- ワークフロー・承認管理
- 要求事項のトレーサビリティ
- 部門横断のコラボレーション
- コンプライアンス・監査対応
- ERPやMESなど基幹システムとの連携
利用者は設計部門にとどまりません。製品マネージャーをはじめ、製造、品質保証、調達・購買、サービス、コンプライアンスの各担当者まで、製品に関わる幅広い部門が同じ情報を参照します。
PDMはPLMの一部なのか
一般的には、PDMはPLMを構成する重要な機能の一つとして位置付けられます。設計データの管理は、製品ライフサイクル全体を統制するうえで重要な役割を担うためです。ただし、実際のシステム構成や製品の位置付けはベンダーによって異なります。PLMと単体のPDMを連携させるケースもあれば、PDM機能を備えたPLMプラットフォームを採用するケースもあります。
たとえばAras Innovator PLMは、CADデータ管理のための統合PDM機能を備えており、その統制範囲を設計・製造・品質・サービスへと拡張しています。
PLMとPDMの7つの主な違い
PDMとPLMには重複する機能もあるため混同されやすいですが、想定している管理範囲や対象領域は大きく異なります。
以下の表に、7つの主な違いをまとめました。
| 項目 | PDM(製品データ管理) | PLM(製品ライフサイクル管理) |
| 適用範囲 | 設計・エンジニアリングデータ | 製品ライフサイクル全体 |
| 管理データ | CADファイルとリビジョン | 製品情報、ライフサイクルデータ |
| 利用者 | 設計チーム | 部門横断のチーム |
| ワークフロー | 設計承認 | 全社のライフサイクルプロセス |
| BOMと変更管理 | 設計上の構造 | ライフサイクル全体への影響とガバナンス |
| システム連携 | CADツール | ERP、MES、品質管理、サービス、PIM |
| 導入範囲 | 部門単位 | 全社的な変革 |
管理範囲とライフサイクルの対象
PDMは設計データに特化する一方、PLMは企画から製造、サービス、廃止までの製品ライフサイクル全体を対象とします。そのため、複数部門が関わる製品を扱う企業ほど、PLMによる広範な統制が効果を発揮します。
管理するデータとデータモデル
PDMは主にCADデータや図面、関連文書などの設計・開発データを中心に管理するのに対し、PLMは製品や部品を軸に、ライフサイクル全体に関わる情報やプロセスを統合します。 そのため、複数部門をまたいで必要な情報をスムーズにたどれるようになります。
利用者と部門間のコラボレーション
PDMはCADを扱う設計者を中心に利用される一方、PLMは製造や品質、調達など社内外の幅広い部門が同じ製品情報を参照します。全員が最新情報を共有できるため、部門間の認識のずれを防げます。
ワークフローと意思決定の管理
PDMは主に設計・開発領域におけるデータ管理や承認を支援する一方、PLMは複数部門の合意が必要な設計変更や新製品導入など、より広範なプロセスを統制します。 これにより、全社的な承認フローが標準化され手戻りを減らせます。
BOM・構成管理・設計変更の影響範囲
PDMは設計上の部品構成を管理するのに対し、PLMは設計BOMと製造BOMを結びつけて後工程への影響まで連動させます。変更時の影響範囲を正確に把握できるため、在庫や取引先への波及リスクを抑えられます。
システム連携とデジタルスレッド
PDMはCADツールとの連携が中心ですが、 PLMはERPやMESなどの基幹システムと連携し、製品情報を部門間でつなぎます。部門間でデータを手動で転記する必要がなくなり、情報の食い違いを防げます。
導入規模・期間・コスト
PDMは設計部門など比較的限定された範囲から導入しやすい一方、PLMは複数部門の業務プロセスを対象とするため、要件整理や業務設計を含めた大規模な取り組みになる傾向があります。そのため、PLMの成否はプロセス見直しや組織の定着化体制に大きく左右されます。
このように、PDMとPLMは一方がもう一方を置き換えるものではありません。それぞれ異なる経営課題を解決するためのシステムであり、多くの製造現場では役割を分担させることで最大の効果が得られます。
PDMとPLMの連携方法
PDMとPLMは競合するシステムではなく、それぞれの役割を補完しながら連携できます。PDMで設計データやリビジョンを管理し、その情報をPLMで製品情報やライフサイクルの業務プロセスとつなぐことで、部門間の情報連携を強化し、製造業のDXを支えるデジタルスレッドの実現につながります。
なお、PDM機能を標準搭載したPLMを導入する場合、PDMを別途用意する必要はありません。本章では、PDMとPLMを連携する場合の情報の流れや構成、設計時のポイントを解説します。
5.1. CADから製造・販売までの情報連携の流れ
設計変更が発生した場合、情報は次のような順序で各システムを流れていきます。
- PDM:CADのリビジョンや設計ファイル、設計部門内の承認を管理する
- PLM:設計変更の起票・承認を行い、関係部門のレビューを調整したうえで製品構成を決定する
- ERP:承認済みの品目やBOMを受け取り、生産計画や調達、在庫管理に反映する
- PIM:仕様や説明文などの商品属性が変わった際、ECサイトやカタログ向けの情報を更新する
このように各システムが連携することで、製品情報は統制された状態で設計から製造、販売へと引き継がれます。また、変更の経緯や承認履歴が明確に残るため、後からのトレーサビリティ確保にも役立ちます。
連携前に「システム・オブ・レコード」を定義する
PDM、PLM、ERP、PIMなどを連携させる前に必ず決めておきたいのが、データの種類ごとの「システム・オブ・レコード(SoR)」です。これは、そのデータにおいて正となる情報の管理元システムを指します。
一般的には、各システムの得意領域に応じて次のように割り当てます。
- PDM:CADファイル、設計リビジョン
- PLM:設計BOM(EBOM)、リリース済みの製品構成
- ERP:製造BOM(MBOM)、品目マスタ、原価、在庫
- PIM:顧客向けの製品属性、チャネル別のコンテンツ
ただし、これはあくまで一般的な導入パターンの一例であり、すべての企業に当てはまるわけではありません。たとえばMBOMをPLM側で管理する企業もあります。実際の割り当ては、自社の業務プロセスやプラットフォームの機能に合わせて柔軟に決めることが大切です。
PDM・PLM・ERP・PIMの違い
製品情報を扱うシステムには、PDMやPLMのほか、ERPやPIMなどがあります。それぞれ管理する情報や目的が異なるため、各システムの役割を理解したうえで、必要に応じて連携することが重要です。システム間で製品情報を適切につなぐことで、設計から業務、販売まで一貫した情報活用が可能になります。
また、製品の複雑化やデジタル化を背景に、PLMをはじめとする製品情報基盤への投資も拡大しています。 CIMdataによると、世界のPLM市場は2025年に883億ドルとなり、前年比9.9%成長しました。こうした市場環境を踏まえても、製品情報を部門横断で活用するためのシステム連携は重要なテーマの一つといえるでしょう。
比較表:目的・管理データ・利用者・連携先
4つのシステムの違いを、一般的な導入パターンをもとに整理すると次のとおりです。
| システム | 目的 | 管理データ | 利用者 | データの 受け渡し先 |
| PDM | 設計データの効率的な管理 | CADモデル、図面、アセンブリ、メタデータ、リビジョン | 設計エンジニア、CADユーザー、設計マネージャー | PLM、設計チーム |
| PLM | 製品ライフサイクルと意思決定の統制 | 要求事項、EBOM、ECR/ECO、品質・コンプライアンス情報 | 設計、製造、品質保証、調達、サービス部門 | ERP、MES、サプライヤー、サービス部門 |
| ERP | 経営・業務プロセスの計画と実行 | 品目マスタ、MBOM、在庫、調達・生産・財務データ | 業務、製造、調達、経理・財務などの各部門 | 生産現場のシステム、物流、財務 |
| PIM | 顧客向け製品コンテンツの拡充と配信 | 商品説明、仕様、画像、マーケティング属性 | マーケティング、EC運営、営業、チャネル担当 | ECサイト、マーケットプレイス、販売代理店 |
表から分かるように、利用する部門はシステムごとに大きく異なります。PDMとPLMが主に「ものづくり」の領域を支えるのに対し、ERPは経営管理全般、PIMはマーケティングや販売チャネルを支えます。
製品データが流れる一般的なプロセス
製品データは基本的に設計から製造、販売へと流れます。PDMの設計データはPLMで承認・リリースされ、ERPの調達・生産や、PIMの顧客向け情報発信へと活用されます。
しかし、流れはそこで終わりません。後工程で得られた情報が上流へフィードバックされ、次の改善につながるケースが多くあります。
- 製造現場から:組立時の不具合や加工の課題が見つかり、設計変更を行う
- サービス部門から:市場での故障データに基づき、部品仕様を見直す
- 営業・顧客から:顧客の要望や競合動向が、次期モデルの要求事項に反映される
こうしたフィードバックはPLMで設計変更として統制され、必要に応じてPDM上の設計データに反映されます。つまり、これら4つのシステムは一方向にデータを受け渡すだけではなく、後工程で得られた情報を上流へフィードバックし、製品改善につなげる関係にあります。
各システムの管理主体を明確にし、統制のとれた連携を実現できれば、設計・製造・業務・営業の全部門が同じ信頼できる製品情報をもとに効率よく動けるようになります。
PDMで十分なケースとPLMが必要なケース
PDMとPLMのどちらを選ぶべきかは、製品の複雑さや業務プロセス、部門間の連携範囲によって異なります。
ここでは、PDMで十分なケース、PDMからPLMへの拡張を検討するケース、PDMとPLMを併用するケースの3つに分け、選定のポイントを整理します。

PDMで十分なケース
次のような優先事項がある場合は、PDMの導入が適しています。
- CADファイル、図面、設計リビジョンを効率よく管理したい
- 小規模、または集約された設計チームを支援したい
- 正確なバージョン管理・リビジョン管理を維持したい
- 単一部門内で設計ワークフローを完結させたい
- 大規模なプロセス変革なしに、設計コラボレーションを改善したい
比較的シンプルな製品を扱い、設計ワークフローも限定的な企業にとって、PDMは現実的な第一歩となります。全社的なライフサイクル管理に必要な大規模な投資を避けながら、設計データ管理に欠かせない基本機能を確実に導入できるためです。
PDMからPLMへの拡張を検討すべきケース
企業が成長し製品バリエーションが増加すると、製品開発は設計部門だけの仕事にとどまらなくなります。マルチ拠点での開発体制や、厳格な規制対応が求められるようになると、PDM単体での管理には限界が生じます。
次のような兆候が見られる場合は、PLMへの移行や拡張を検討すべきタイミングです。
- 部門間の調整コスト増加:設計変更のたびに各部門との確認やすり合わせに時間がかかる
- トレーサビリティの不足:変更履歴や承認の証跡を迅速に提示できない
- 情報サイロ化の限界:設計データと製造・品質・調達のシステムが分断されている
こうした課題が顕在化する中堅・大手製造業にとって、製品ライフサイクル全体をワンストップで統制できる PLMの導入を検討する必要性が高まります。
PDMとPLMを併用すべきケース
すでにCADとPDMの運用環境が成熟している企業では、既存のPDMをPLMに全面置き換えるのではなく、両者を連携・併用する方法も選択肢となります。特に次のような状況に当てはまる場合に向いています。
- 設計部門で定着している使い慣れたPDMのワークフローを変えたくない
- 製品構成や設計変更の高度な統制・ガバナンスはPLMに集約したい
- 設計から製造、品質、調達、サービスにまたがる全社的な連携基盤が必要
この構成では、設計者は慣れ親しんだCAD・PDM環境で作業を続け、正式にリリースされたデータのみがPLM側へ引き継がれます。現場の業務負荷や現場の抵抗感を抑えながら、製品ライフサイクルの統制範囲を全社へスムーズに拡張できるのが大きな利点です。
具体的な連携フローやシステム間のデータ受け渡しについては、第5章もあわせてご参照ください。
自社はどちらを選ぶべき?PDM・PLM選定チェックリスト
自社に最適なシステムを見極めるため、次のチェックリストで現状を確認してみましょう。
- 製品の構造が非常に複雑で、仕様やバリエーションが数多く存在するか
- 品質保証や法規制への対応状況を示す証跡を迅速に提示する必要があるか
- 設計変更を行う際に、製造・品質・調達など複数部門の承認・合意が必要か
- 製品開発チームが国内・海外の複数拠点にまたがっているか
- 社外サプライヤーに対して、権限を厳密に管理しながら製品データを共有したいか
- 設計変更が製造や調達などの後工程に与える影響を把握しにくいと感じるか
- 設計部門とERPなどの基幹システムの間で、データの受け渡しミスや遅延が発生しているか
- 部門の垣根を超えた、一貫性のある製品ライフサイクル管理を実現したいか
これはあくまで判断の目安ですが、現在の業務課題と今後の事業成長を見据えるための参考としてご活用ください。
PDMからPLMへ移行するロードマップ
PDMからPLMへの移行は、既存業務への影響を抑えるため、段階的に進めることが重要です。ここでは、PDMからPLMへ移行する際の具体的な導入手順や成果の測定方法、スムーズな移行に向けた注意点を解説します。

PDMからPLMへ移行する5つのステップ
PDMからPLMへスムーズに移行するため、次の5つのステップに沿って進めます。
フェーズ1:現状評価
まず、現在利用しているPDMの構成や管理データ、業務プロセス、利用部門を整理します。あわせて、設計変更や承認、データ連携などの現行業務における課題を洗い出し、PLM導入によって解決したい目的と優先順位を明確にします。
フェーズ2:データ管理の定義
システム間の連携を構築する前に、設計ファイルや製品構成、業務データ、顧客向け情報の管理元(SoR)を明確に決定します。
フェーズ3:パイロット運用
設計変更管理や新製品導入(NPI)などの特定プロセスから小さく着手し、ワークフローを検証しながら対象ユースケースを広げます。
フェーズ4:段階的移行
必要最小限の範囲でPLMをPDMやERPなどの業務システムと接続し、データ移行も今後の業務に本当に必要なものへと絞り込みます。
フェーズ5:定着化と継続改善
実際の利用状況をモニタリングしてユーザーからのフィードバックを集め、業務要件の変化に合わせてプロセスを継続的に見直していきます。
導入成果を測るためのKPI
PLM導入の効果を測定するためには、業務効率と定着度の両面から次のような指標(KPI)を設定します。
| 評価観点 | 主な測定項目 |
| 検索効率 | 設計データの検索・参照にかかる時間 |
| データ品質 | 重複や廃版ファイルに起因するミス件数 |
| 変更管理 | 設計変更サイクルタイム(完了までの期間) |
| システム連携 | ERPへのデータリリース時のエラー件数 |
| 部門間連携 | BOM(部品表)の照合や確認にかかる工数 |
| 開発スピード | 新製品導入(NPI)のリードタイム |
| 定着度 | ユーザーのシステム利用頻度・浸透度 |
正確な効果測定を行うためには、導入前のベースライン数値をあらかじめ計測しておくことが重要です。事前の数値があることで進捗を客観的に評価でき、次の改善領域もスムーズに特定できます。
移行・導入時の注意点
PDMからPLMへの移行でつまずきやすいのは、ソフトウェアそのものよりも周辺の準備における課題です。
特によくある落とし穴として、次のような点が挙げられます。
- 既存データの品質不良:命名ルールの不統一や重複データを放置したまま移行すると、PLM上でも混乱が継続する
- 過度なカスタマイズ:現行業務に合わせすぎて独自改修を重ねると、将来のバージョンアップや保守の負担が大きくなる
- 現場の巻き込み不足:利用部門の意見を十分に反映させないまま進めると、稼働後にシステムが定着せず使われなくなる
システムアセスメントやワークフローの設計、データ移行、PDM・ERPとの連携までを自社内だけで完結させるのは容易ではありません。社内のリソースやノウハウが不足している場合は、外部の専門パートナーによる支援を検討することも重要です。
ルビナソフトウエアでは、Aras PLMのコンサルティングおよびインテグレーションサービスを提供しています。既存の設計業務や事業運営への影響を最小限に抑えながら、製造業におけるPLM移行を計画から運用定着まで一貫してサポートいたします。
よくある質問(FAQ)
Q1. PDMとPLMの違いとは?
最も大きな違いは管理の適用範囲です。PDMはCADファイルや設計図面などの設計データ管理に特化し設計チームを支える一方、PLMは製品のライフサイクル全体を通じて情報やプロセス、意思決定を統制し、設計・製造・品質・調達などの全社各部門をつなぎます。
Q2. PDMはPLMの一部ですか?
設計データ管理はライフサイクル統制の要であるため、一般的にPDMはPLMの基盤機能とみなされます。ただし、システム構成は企業によって異なり、PLMと個別PDMを連携させるケースもあれば、最初からPDM機能を内蔵したPLMプラットフォームを採用するケースもあります。
Q3. PLMを導入すると、PDMは不要になりますか?
必ずしも不要になるとは限りません。既存のCAD中心のPDM環境やワークフローをそのまま維持して上流にPLMを追加する企業も多く存在します。置き換えるか併用するかは、現在のシステム環境や業務要件に合わせて柔軟に判断されます。
Q4. PDM・PLM・ERPはどのように連携しますか?
PDMが設計ファイルとリビジョンを管理し、その確定データをPLMがライフサイクル全体のワークフローとして統制します。さらに、PLMで承認された製品データをERPが引き継ぎ、調達・生産計画や在庫管理、財務などの実行プロセスに活用するという流れで連携します。
Q5. PDMとPLMとPIMの違いとは?
PDMは設計・開発段階の技術データを管理し、PLMはライフサイクル全体の製品プロセスを統制します。これらに対し、PIMはWebサイトやECカタログ、販売代理店チャネルなどで使用される商品説明やマーケティング用アセットなど、顧客向けの製品コンテンツを専門に管理します。
まとめ
PDMとPLMは、どちらも製品情報を扱うシステムですが、その役割は異なります。PDMが設計データの正確性や変更履歴を管理するのに対し、PLMは製品に関する情報や業務プロセスをライフサイクル全体でつなぎ、部門間の連携を支援します。
自社に適したシステム構成を検討する際は、まず「製品データがどこで作られ、どこで管理され、どの部門で利用されているか」を整理しましょう。そのうえで、既存システムとの連携やデータ移行、業務プロセスへの影響を踏まえて、導入方法を検討することがポイントです。
ルビナソフトウエアでは、Aras PLMのコンサルティングからシステムインテグレーションまで、PLM導入を一貫して支援しています。 現状・要件の整理から導入アプローチの検討、ワークフロー設計、データ移行、PDM・ERPとの連携まで、既存業務への影響を抑えながら、企業ごとに適したPLM環境の構築をサポートします。
「自社にはPDMとPLMのどちらが適しているかわからない」「既存のPDMやERPとどのように連携すればよいかわからない」といったお悩みがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。